述語論理

 「石は硬い」という原始的命題は、「石」と「〜は硬い」の2つの部分に分けることができる。「石」は、個体と呼ばれるグループにまとめられ、「〜は硬い」は、述語と呼ばれるグループにまとめられる。「太郎と次郎は兄弟だ」という原始的命題では、「太郎」、「次郎」は個体、「〜と〜は兄弟だ」は述語であり、特に、2項述語と呼ばれる。「〜は硬い」は1項述語。述語は、複数の項を持つ。

 記法として、PをN項述語、a_1、…、a_Nを、N個の個体とし、P[a_1, ... , a_N]と書いて、原始的命題を表しているとする。P[... , a, ...]と、項の数をあいまいにして表すこともある(もちろん、aは個体、「...」の部分にも個体が並んでいるとする)。

 P、Qを1項述語、a、bを個体とする。たとえば、(P[a]∨Q[b])⇒P[b]は、派生的命題であるが、全体でみて、2項述語と見ることができる。よって、P[a]と書いても、それは原始的命題とは限らないことにする。原始的命題の述語は原始的述語、派生的命題の述語は派生的述語と呼ぶことにする。このとき、派生的述語は本当の述語ではなく、仮のもの、一時的なものであることに注意。原始的述語こそ、本当の述語。

 命題の生成規則を追加する。(2) P[... , a, ...]が命題のとき、∀x(P[... , x, ...])はまた、命題であると取り決める。述語Pの個体aがおかれていた項は束縛されて、使用できなくなっているとみなす。項が1つ減った述語が新たに作り出されたとみなす。「...」の部分には個体があって、変形前後で変わっていないする。∃x(P[... , x, ...])は ¬(∀x(¬P[... , x, ...]))の短縮形とする。記号∀で、外に括り出されたxは、束縛変数と呼ぶ。その位置にある項は使用不可能になったとみなす。ちなみに、記号∀は原始的記号、∃は派生的記号と呼ぶことにする。∀を適用してできた命題は派生的命題とみなす。

 意味的には、次の通り。命題∀x(P[... , x, ...])が正しいとか正しくないなど、何らかの性質を持つとき、すべての個体aについて、命題P[... , a, ...]は正しいとか正しくないなど、同じ性質を持つ。命題∃x(P[... , x, ...])が正しいとか正しくないなど、何らかの性質を持つとき、ある個体aで、命題P[... , a, ...]が正しいとか正しくないなど、同じ性質を持つ。

 正しい命題の生成規則も追加する。命題論理の公理系に次のを追加して、述語論理の公理系とする。
 [5] aは適当な個体とする。Pは適当な述語とする。
   ∀x(P[... , x, ...])⇒P[... , a, ...]
の形の命題はすべて、正しい命題であると取り決める。もちろん、xとaは同じ位置にあって、「...」の部分には適当な個体が並んでて、記号⇒の前後で変わっていないとする。
 [6] Qは適当な述語で、束縛変数xによる束縛とは関係がないとする。
   (∀x(Q[...]⇒P[... , x, ...]))⇒(Q[...]⇒∀x(P[... , x, ...]))
の形の命題はすべて、正しい命題であると取り決める。
 [7] どんな個体aに対しても、P[a]が正しい命題であるとする。∀x(P[x])は正しい命題として扱う。
(参考「記号論理学」清水義夫 東京大学出版会

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